「お金を稼げる働き口がある」――その言葉に背中を押され、海外へ向かった末に悲劇的な状況に陥ったとされる中国人女性の報道が、ネット上で大きな衝撃を広げている。
中国メディアなどの報道によれば、中国版TikTok(Douyin)で一定数のフォロワーを持つインフルエンサー女性が昨年4月、収入を得る目的でカンボジアへ渡航。その後、現地の犯罪組織に拉致され、暴行や拷問、売春の強要を受けたとされる。脱出後は精神的に不安定な状態になり、路上をさまよっていたところを発見された――という内容だ。
現時点で、事件の全容がどこまで公的に確認されたかは断片的であり、詳細には不明点も残る。ただ一方で、「高給」「簡単」「すぐ稼げる」――甘い言葉に誘導され、海外で犯罪に巻き込まれるという構図自体は、近年繰り返し問題視されているテーマでもある。
報道の概要:渡航、拉致、そして路上での“発見”
報道によると、女性は「高収益の働き口」を求めてカンボジアへ向かった。その後、犯罪組織に拘束され、暴力・拷問・性被害を受けたとされる。逃げ出したあと、精神的な異常が疑われる状態で街を歩き回っていたという。
さらに、彼女の近況が広く知られるきっかけとなったのが、第三者によってSNSに投稿された「路上で保護されたとされる写真」だった。写真では髪が乱れ、痩せ細ったように見える姿で、上着と下衣の組み合わせも不自然だと受け取られた。手元にはレントゲン写真のようなものを持っていたとも伝えられている。
その後、在外公館が状況把握を進め、病院への移送や治療、家族への連絡、帰国手続きへ向けた対応を行ったとされる。公館側は「海外の高賃金求人は違法賭博・詐欺・薬物など犯罪と結び付く危険がある」と注意喚起したという。
「彼氏と同行」情報の扱いは慎重に:事実関係は未確定
報道では「渡航初期に彼氏と同行していた」とも伝えられている。ただし、その男性が犯罪に関与していたのか、同様に被害に遭った人物なのか、あるいは別の立場なのか――この点は明確に確認されていないとされる。
こうした未確定要素が残るケースでは、SNS上で推測が先行しがちだ。しかし推測は、当事者をさらに追い詰めたり、無関係の人物を標的にしたりする危険がある。情報の受け取り方は冷静であるべきだろう。
SNSに残された“更新”が示すもの:本人投稿か第三者か
女性のアカウントでは、一定期間、現地で撮影されたとみられる映像が投稿され続けていたとも言われている。
ただ、ここも慎重に見るべきポイントだ。拘束下では本人の意思とは無関係に投稿が行われる可能性がある。逆に、本人が危険を感じつつも「安全なふり」をして発信していた可能性もゼロではない。いずれにしても、SNS上の更新だけで「本人は平気だった」と断定するのは危険だ。
この件が示すのは、SNSの“表面”は安全の証明にならないという現実でもある。
なぜ「高給案件」は刺さるのか:背景にある“焦り”と“正常性バイアス”
海外の高収益求人トラブルが繰り返される理由の一つは、「信じたい心理」が生まれやすいことだ。
- 生活費や借金、家族の事情などで「早く稼ぐ必要」がある
- 仲介が“友人の紹介”や“恋人の同伴”など、安心材料を装う
- 「自分だけは大丈夫」と考える正常性バイアスが働く
加えてインフルエンサーの場合、収益の波が大きく、短期で資金が必要になる局面もある。そこに“うまい話”が入り込む余地が生まれる。
しかし結局のところ、「簡単に大金」には、その分だけ大きな代償が隠れている可能性が高い。
海外「高収益求人」に潜む典型パターン
今回の報道内容が事実だとすれば、典型的な危険パターンと重なる部分がある。
- 仕事内容が曖昧(現地に行ってから説明すると言われる)
- 移動・滞在の手配を相手が全て握る(パスポートの預かり、送迎の固定など)
- “とりあえず来れば分かる”という言い回し
- 連絡手段が限定される、または監視される
- 「辞めたら違約金」など、逃げにくい条件を後出しする
そして最悪の場合、監禁・暴力・脅迫が絡む犯罪へと接続される。公館が警告するのは、この“出口のない構造”があるからだ。
もし今、同じ誘いを受けている人がいたら:最低限の自衛策
この手の話題は“遠い国の他人事”に見えがちだが、誘いの入口は身近なSNSのDMや紹介から始まることもある。だからこそ、具体的なチェックが必要だ。
- 雇用主の実在確認:法人名・所在地・固定電話・登記や公式サイトの整合性
- 契約書の提示:仕事内容・勤務地・労働時間・報酬・解約条件が明文化されているか
- パスポートは預けない:預けろと言われた時点で危険サイン
- 第三者へ共有:渡航前に家族や友人へ行程・相手情報・連絡先を渡す
- 在外公館や現地の日本語支援窓口の連絡先を控える
そして何より、「今すぐ稼げる」「人生逆転」系の文句は、まず疑う。これだけでも被害は大きく減る。
まとめ:拡散の前に、守るべきは“次の被害者を出さないこと”
今回の件は、本人に起きたとされる被害の深刻さが語られる一方で、SNS上では推測や断定が先行しやすい。だが、未確定情報の断定は二次被害を生む。
一方で、公館が強い言葉で注意喚起している通り、海外の「高給案件」が犯罪と地続きになり得ることは軽視できない。
“うまい話”は、うまく見せるための演出がある。だからこそ、危険の入口を見抜き、「行かない」「渡さない」「一人で抱えない」を徹底したい。
