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「外国人料金」は設計図の段階で詰む──大阪ラーメン店“二重価格”騒動が示した、炎上する仕組みと現実的な逃げ道

王道家直系 我道家

大阪のラーメン店をめぐり、「英語表記の券売機画面だけ値段が高い」という趣旨の話が拡散し、二重価格の是非が議論になっている。 店側・客側それぞれの言い分が交錯しやすいテーマだが、ここで注目すべきは“善悪”よりも、もっと手前の問題だ。

それは、「外国人だけ高くする」という設計が、現場に置いた瞬間に破綻しやすいということ。 炎上が起きるのは偶然ではない。仕組みのつくり方が、揉める未来を呼び寄せる。

今回の騒動は「差別かどうか」以前に、運用ロジックが壊れている

今回話題になった点は、「英語画面=割増」という見え方だ。 もしその通りの運用であった場合、最初から矛盾を抱える。

なぜなら、言語設定と国籍は一致しないからだ。 英語が読める日本人もいれば、日本語が読める外国人もいる。 漢字文化圏の旅行者、在住の外国籍の人、帰化した人、海外生活の長い人──境界は無数にある。

つまり、「英語画面を触った=外国人扱い」と見える仕組みは、線引きの根拠が説明できない。 説明できないルールは、店にとっても客にとっても不幸の種になる。

揉める理由はシンプル。「判定係」を店員にやらせてしまうから

「外国人料金」が危ないのは、価格の高低だけが問題ではない。 店側が無自覚のまま“判定係”を背負わされる点が本当に危険だ。

  • 外見で判断 → 失礼・偏見と受け取られやすい
  • 言語で判断 → 読める/話せる人が混在して破綻
  • 国籍確認 → そもそも聞いた時点で火種になりやすい

結果として現場は「じゃああなたは何人なの?」という、最も触れてはいけない領域に引きずり込まれる。 そして一度でも揉めると、SNSでは“切り取られた一場面”が独り歩きして、店も客も戻れなくなる。

今回「出禁」などの強い言葉が飛び交ったとされるのも、結局は設計ミスのしわ寄せが現場に降りたからだ。 個別排除で運用欠陥を埋めようとすると、次は差別問題として燃えやすい。 これは飲食店に限らず、どのサービス業でも同じ構図になりやすい。

「二重価格=悪」ではない。必要なのは“分け方”の再設計

誤解されがちだが、二重価格そのものを否定する必要はない。 観光需要が一気に増える地域では、混雑、治安、衛生、近隣トラブルなどの負荷が高まり、 「同じ価格のまま客数だけが膨張する」状態になりやすい。

問題は、二重価格を「外国人」と結び付けてしまうことだ。 国籍で切る議論は、ほぼ確実に分断と炎上に向かう。 そこで視点を変える必要がある。

炎上しにくい唯一の方向性は「居住者割引」型

結論から言うと、揉めにくい設計は一つに寄っていく。 それが、「割増」ではなく「割引」で組み立てる方式だ。

やり方はこうだ。

  • 通常料金(定価)をまず提示する
  • その上で、一定条件(居住・会員・常連施策など)を満たす人に割引を提供する

ここで重要なのは、「外国人かどうか」を店が判定しないこと。 割引を受けたい人が条件を満たしていることを示し、店は機械的に適用するだけ。

この形なら、日本人・外国人の区別ではなく、「その地域に暮らしている」「会員である」といった 客観条件で整理できる。 つまり、国籍ではなく“生活者としての関係性”を軸にすることで、差別の地雷を避けられる。

飲食店で現実的にやるなら:三つの「揉めない料金設計」

「居住者割引」以外にも、飲食店が混雑や需要超過に対応するための方法はある。 ポイントは、誰が見ても納得できる線引きにすることだ。

1)会員価格(スタンプ/アプリ/LINE)で“常連優待”にする

最も安全なのは、国籍も住所も関係ない「会員価格」。 来店履歴や登録の有無で割引を適用するため、判定が簡単で揉めにくい。 「常連さんを大事にしたい」という説明も通りやすい。

2)時間帯価格(ピーク割増/アイドル割引)で需要を散らす

オーバーツーリズムで混むなら、混む時間を高く、空いている時間を安く。 これは交通やホテルで当たり前に使われている発想で、説明がしやすい。 「ピーク時は回転が落ちて品質が保てない」という理由も付けられる。

3)予約枠を作り、予約は少し高め・当日枠は通常などで調整する

遠方の人ほど予約したい。地元の人ほど当日フラッと入りたい。 この性質を利用し、予約枠の価格を調整するのも現実的だ。

いずれの方法でも共通するのは、客側が「なるほど」と理解できる説明が可能な点だ。 「あなたが外国人だから」では説明が破綻するが、 「会員だから」「この時間帯だから」「予約枠だから」なら説明が成立しやすい。

もし「言語画面で価格が違う」設計をやるなら、最悪でもこうしないと危ない

今回のように「英語だけ高い」と見える設計は、たとえ意図が別にあったとしても疑念を招く。 どうしても画面ごとに構成を変えるなら、少なくとも次は必須だ。

  • 全言語で同一価格を表示する(価格差を作らない)
  • 割引があるなら「条件と手順」を全言語で同じように表示する
  • スタッフの裁量にしない(言った言わないの揉め事を減らす)

「言語=国籍」という誤解を生む設計は、SNS時代においてあまりに危険だ。 店のブランドも、街の評判も、一瞬で持っていかれる。

まとめ:炎上は“客のせい”でも“店のせい”でもなく、仕組みのせいになりやすい

大阪ラーメン店の騒動が突きつけたのは、誰かを断罪する話ではない。 設計として無理のある二重価格は、現場で必ず摩擦になるという現実だ。

「外国人料金」という言葉が先に立つと、感情は割れ、議論は荒れ、現場は疲弊する。 一方で、混雑や需要超過への対策が必要なのも事実。 だからこそ、結論はこうなる。

“外国人割増”ではなく、“居住者割引”や会員優待、時間帯価格などの客観条件で組み直す。 それが、店も客も守る現実的な落としどころだ。

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