鳥山明さんの名作漫画『ドラゴンボール』の世界観が、そのまま深海の魚に――。
琉球大学が2025年11月27日に発表した新種のハゼ科魚類が、いま大きな話題を集めています。研究チームはこの魚に、学名「Vanderhorstia supersaiyan(ヴァンダーホルスティア・スーパーサイヤン)」という、 インパクト抜群の名前を与えました。
なぜ「スーパーサイヤン」? ドラゴンボール由来の学名に世界も注目
今回発見された新種は、ハゼ科ヤツシハゼ属の一種。最大の特徴は、その派手なヒレと色彩です。
ヒレには鮮やかな黄色の帯が走り、全体として“電気がバリバリとほとばしっている”ような印象を与える模様になっているとのこと。
研究チームはこの姿を見て、『ドラゴンボール』に登場する悟空やベジータたちの戦闘形態、 金色の髪とオーラをまとってパワーアップする「スーパーサイヤ人」を連想。 そこから、そのまま学名に「supersaiyan」を採用するという、遊び心と愛にあふれた命名が行われました。
学名はラテン語・ギリシャ語からつけられることが多い一方、近年は映画や漫画、ゲームなどポップカルチャー由来の名前も増加中。 『ドラゴンボール』のキャラクターや用語が、ついに“本物の生物”の名前としても刻まれた形です。
日本語名は「エレキハゼ」 トワイライトゾーンからやってきた深場のニューカマー
研究チームは、日本語の標準和名として「エレキハゼ」を提案しています。
名前の由来は、その色彩から連想される「バリバリとほとばしる電気」。 ビジュアル的にも名前的にも、とにかく記憶に残りやすい一匹です。
採集された場所は、沖縄・石垣島沖の「トワイライトゾーン」と呼ばれる水深100〜300メートル帯。 今回の個体はそのなかでも水深210メートル付近という、かなり深いエリアで釣りによって捕獲され、 研究室での詳細な分析を経て新種と確認されました。
ヤツシハゼ属はこれまで、浅海域から水深123メートル程度の深場まで、計33種が知られていましたが、 水深210メートルというさらに深い層で新たな種が見つかったことは、 「深場にはまだまだ未知の生物がいる」という証拠と言えそうです。
既存種とは“別格”の色と形 ヒレの黄色帯やうろこの枚数も異なる
もちろん、見た目のインパクトだけで「新種」になるわけではありません。
研究チームは、これまで知られているヤツシハゼ属の他の種と比較し、 うろこの枚数や各ヒレの長さ、体の比率といった細かな形態を徹底的に検証。
その結果、
・ヒレに鮮やかな黄色の帯が入る独特の色彩パターン
・ほかのヤツシハゼ属とは異なる体のプロポーション
・うろこの数など、複数の形態データの違い
といった点が確認され、単なる「色違い」や「地域差」では説明できない、 明確な“別種”であると判断されました。
見た目も名前も派手な「スーパーサイヤン」ですが、その裏には、 きわめて地道で緻密な分類学の作業が積み重ねられています。
沖縄の「トワイライトゾーン」は“宝の山”? まだ見ぬ新種が続々眠っている可能性
研究チームは今回の発見について、「これほど特徴的な色彩を持つ魚種ですら、 これまで未発見のまま深場に隠れていた」点を重く見ています。
トワイライトゾーン(水深100〜300メートル帯)は、
・日光がほとんど届かない薄暗い環境
・水温や水圧が急激に変化する過酷な条件
といった理由から、浅いサンゴ礁に比べると調査が大きく遅れてきたエリアです。
それだけに、沖縄周辺のトワイライトゾーンには、
「まだ学術的に記録されていない魚類や無脊椎動物が数多く生息しているのではないか」
と考えられてきましたが、今回ようやくその“可能性の高さ”が具体的な形で示されたとも言えます。
今後、深場調査の技術や装備が発達すれば、第二、第三の「スーパーサイヤン」のような、 派手でユニークな新種が次々と発見されるかもしれません。
ドラゴンボールと海の生き物――ポップカルチャーとサイエンスの幸せな出会い
今回のニュースがここまで注目された背景には、やはり『ドラゴンボール』の存在があります。
世界累計発行部数は2億6000万部を超え、テレビアニメや映画、ゲームなどを通して 何世代にもわたって愛されてきた“世界的コンテンツ”です。
近年は、こうしたポップカルチャー由来の名前を生物に付けることで、
・一般の人が研究内容に興味を持ちやすくなる
・子どもたちが「科学って面白そう」と感じるきっかけになる
といったメリットが指摘されることも増えています。
「スーパーサイヤン」と名づけられた小さなハゼが、 深海調査や生物多様性への関心、さらには鳥山明作品へのリスペクトを 一度に伝えてくれる“メッセンジャー”的な存在になっているとも言えそうです。
研究成果は学術誌に掲載 世界中のドラゴンボールファンもざわつく?
この「Vanderhorstia supersaiyan(エレキハゼ)」に関する研究成果は、 魚類学の専門誌『Ichthyological Research』に2025年11月27日付で掲載されています。 学術的にも正式に認められた新種であり、単なるネット上の“ネタ”ではありません。
国内外のドラゴンボールファンの間では、
「名前のセンス最高」「悟空が海にいたらこんな感じ?」
「次は『フリーザ』や『ベジータ』も出てくるのでは」
といった反応が生まれてもおかしくない、ユニークなニュースです。
一方で、研究者サイドとしては、
「文化的にも親しみやすい名前をきっかけに、深海環境や生物多様性の重要性に目を向けてほしい」
という思いも込められているはず。科学とエンタメが手を取り合うことで、 新しい形の「知的な楽しみ方」が広がっていきそうです。
まとめ:スーパーサイヤンは海の底にもいた! これからの“新種ラッシュ”に期待
琉球大学が発見・報告した新種のハゼ科魚類「Vanderhorstia supersaiyan」。
ドラゴンボール由来のインパクト抜群な学名と、 エレキハゼというキャッチーな和名、そして深海から見つかった未知の生物というストーリーは、 まさに“ニュース映え”する要素の塊です。
しかし、その裏には、
・沖縄のトワイライトゾーンというまだ調査が進んでいないフィールドの存在
・深場に潜む多様な生物の世界
・地道な分類学の研究の積み重ね
といった、真面目で奥深いサイエンスの世界が広がっています。
もしかすると、あなたが次に耳にする新種の名前も、またどこかの“名作漫画”や映画に ちなんだものかもしれません。
「スーパーサイヤン・フィッシュ」の登場は、ポップカルチャーと科学が共鳴する時代を象徴するニュースと言えそうです。
