警察庁のまとめとして、2025年に懲戒処分を受けた全国の警察官・警察職員が337人に上り、直近10年で最多になったと報じられました。前年比で98人増という大幅な増加で、処分の中身を見ると、いわゆる不祥事だけでなく、勤務中にスマートフォンでゲームをするなどの「職務放棄」に当たるケースが目立っているのが特徴です。市民の安全を守る立場の組織で、なぜ規律の緩みが表面化しているのか。数字の内訳を整理しつつ、世間が抱く不信感の根っこを考えます。
2025年の懲戒処分は337人 逮捕者64人、業務上の処分102人
報道によると、2025年に懲戒処分を受けたのは全国で337人。うち逮捕者は64人、業務上の処分は102人とされています。単に「不祥事があった」では済まないのは、処分数が積み上がった結果、組織全体のチェック機能や教育のあり方が問われる局面に入っているからです。
さらに今回のポイントは、処分理由の中で「勤務中のスマホ操作」などを含む職務放棄が増加傾向にあること。現場感覚でいえば、サボりや漫然勤務は以前からゼロではなかったはずですが、それが処分として表に出る件数が増えたという事実は重いと言えます。警察庁は「指導・教養を徹底する」としています。
増えているのは「職務放棄」 “異性関係”が最多という現実
処分理由の内訳では、「異性関係」(セクハラ、盗撮、不適切交際を含む)が104人で最多。続いて「窃盗・詐欺・横領等」が63人、「職務放棄・懈怠等」が44人とされています。特に「職務放棄・懈怠等」は前年からの増加幅が大きいとされ、「勤務中ゲーム」などの行為が“職務放棄”として処分対象になっている点が、世間の感情を刺激しています。
ここで誤解してはいけないのは、ゲーム=軽い、ではなく、「勤務中に職責を果たしていない」という構造が問題視されていることです。警察官は一瞬の判断で人命や事故対応に関わる職業であり、集中力を欠く行為が常態化していたとすれば、重大事故や見落としの温床にもなりかねません。
具体例として触れられた事件 組織の“説明責任”が問われる局面
記事では、いくつかの象徴的な案件にも触れられています。たとえば、機械製造会社「大川原化工機」をめぐる冤罪事件では、当時の捜査幹部2人が退職していたため、懲戒処分ではなく「懲戒処分相当」という扱いになったとされています。また、ストーカー被害を訴えていた川崎市の女性が殺害された事件では、神奈川県警の幹部ら5人が懲戒処分となったとも報じられました。
これらは、現場の警察官個人の問題に見えて、実際には「組織として何を見落としたのか」「なぜ食い止められなかったのか」という論点に直結します。つまり、不祥事の数そのもの以上に、“再発防止を説明できるか”が信頼回復の鍵になります。
都道府県別:最多は兵庫 上位に神奈川・警視庁・大阪・福岡
都道府県警別では、兵庫が50人で最多。次いで神奈川34人、警視庁30人、大阪26人、福岡18人とされています。数字だけを見ると「特定地域が悪い」と短絡しがちですが、処分の出方は「実態」だけでなく「内部監察の運用」や「表に出す基準」にも左右されます。
ただし、少なくとも市民からすれば「どこが多いか」よりも、日常の安心に直結するのは「対応が改善されているか」です。件数の増減に一喜一憂するより、相談を受けた際の初動、情報共有、上司のチェック、記録の透明性など、仕組みの側が変わるかどうかに注目が集まります。
なぜ“職務放棄”が増えると炎上するのか 「不信の積み重ね」が背景
勤務中のゲームや私的スマホは、単体だと「だらしない」で終わる話に見えるかもしれません。ところが警察の場合、被害相談が軽視された、対応が遅れた、説明が曖昧だった――という経験談が社会に蓄積しやすい領域です。そこへ「職務放棄」が重なると、世間の受け止めは一気に厳しくなります。
さらに、異性関係や盗撮、窃盗といった類型が一定数出続けている現実も、「またか」という印象を強めます。組織としては「厳正に処分している」という説明になりますが、市民目線では「起きないようにしてほしい」「防げなかった理由を知りたい」という要求が先に立ちます。
信頼回復の焦点は“数字”ではなく「現場の行動が変わったと実感できるか」
懲戒処分が増えた背景は一つではありません。内部監察の強化、通報体制の整備、処分基準の運用、社会の目の厳しさなど、複数の要因が絡みます。ただ、どんな背景があっても、最後に問われるのは「警察に相談して大丈夫か」という感覚です。
そのために必要なのは、スローガンではなく実務の改善です。指導・教養の徹底に加えて、相談対応の標準化、記録の残し方、引き継ぎ、上司の確認、監察の独立性、外部から見える形の検証――。こうした積み重ねがあって初めて、「変わった」と言われる段階に進みます。
懲戒処分337人という数字は、警察にとって“痛い現実”であると同時に、改善のための材料でもあります。市民の安全を守る組織が、もう一度信頼を取り戻すには、処分の公表で終わらせず、再発防止の中身を可視化することが不可欠でしょう。
